【 初恋の後悔 】
少し複雑な家庭で育った、まここと玉木。
彼の初恋、そしてその後悔を描く長編ノベル。
クリアまで2時間強ほどかなと思います。
やや複雑な家庭で育ったまこ。
学校でも決して目立つ存在ではなく、仲のいい友人とだけ、ひっそりと付き合うような少年だった。
家庭が複雑だったゆえに、恋愛や結婚について考えることが出来なかったまこが、友人に恵まれ、そしていよいよ自分の気持ちが恋だと気づく、そんなお話です。
中学の頃は楽しんでいた部活だけど、高校ではあまりにも本気で打ち込んでいる周囲の熱意に引けてしまい、部活に入らなかったまこ。
そんな姿からも、人間関係を積極的に結んでいくタイプではないのがわかりますね。
彼はこれからどのように変わっていくのでしょうか。
彼女が出来た友人。
だけど不満を口にしていた友人。
振られてしまった友人。
だけど自分は本当に彼を友人だと思っていたのだろうか?
友人とは、そのまま疎遠になってしまいます。
やたら距離感の近い少女。
彼女のことも苦手に感じ、まこは遠ざけてしまいます。
なぜまこが人と距離を詰めるのが苦手なのか、それもやがて丁寧に描かれます。
そして、まこの子供時代のエピソードも描かれます。
この物語は、子供のまこが大人になるまでを描く物語なのです。
そしてまこは、友人にとても恵まれている。
うまく距離を詰めることが出来ないまこに対し、踏み込み過ぎず、だけど歩み寄らないわけでもない、そんなうまい距離感で付き合う友人たちがたくさんいます。
キャラが多いので混乱するかもしれませんが、画面下のボタンからいつでもキャラクターリストを参照できるので安心です。
とにかく丁寧に描写していくのですが、大きな事件が起こるわけでもなく、ただ淡々とまこの人生を書いていくのです。
そんな淡々としたゲームが面白いのか? と聞かれると、自分でも少し不思議なのですが、「退屈を感じない」と答えるでしょう。
本当に不思議なことなのですが、本当に淡々としたシナリオなのに、まこを見守りたいという気持ちがどんどん湧いてきて、どんどん読み進めたくなるのです。
お風呂かこさんの作品は過去にもレビューしたことがあるのですが、かなりの力量を持った方です。
後悔が出来てよかった、という言葉で、まこの初恋は終わります。
そこにたどり着くまではまこのなかで様々な葛藤があったことだと思います。
決してあたたかとは言えない家庭、そしてそれゆえに恋愛に奥手になっていたまこが変わっていく姿は、素直に喜ばしいものだと感じました。
描写が丁寧で感情移入できるので、こちらもうれしい気持ちになる作品でした。