【 探しものは、夏ですか。 】
読了まで1時間ちょっとの、選択肢のないノベルゲーム。
よく冷えたラムネのような、懐かしくてそして甘くて舌にぴりりと残るような作品。
ほんのりファンタジックなお話です。
*ゲーム画面が大きめのため、75%に縮小して掲載しています
こちらから無料プレイ可能です(ノベルゲームコレクションへ飛びます)
スマホを含むブラウザのほか、Windows/MacintoshでDLプレイも可能です。
大学生の主人公・恭平は、数年ぶりに故郷の田舎へと帰省していた。
祖父のことが苦手で何となく寄り付かずにいた故郷だが、世話になっていた駄菓子屋のおばあちゃん・直田の訃報に、帰ることにしたのだ。
いまはもうシャッターの閉まっている駄菓子屋の前で、だけど懐かしさから中が気になって、郵便受けから中をのぞくと、いるはずのない少女の姿が見えた。
驚く恭平に、駄菓子屋から出てきた少女は、直田の知り合いだと名乗り、そして、覗きとして警察に通報されたくなかったら、探し物を手伝ってほしいという。
しかもそれは、ビー玉。
どこで落としたのかもわからないビー玉を、通った道をしらみつぶしに探していこうと言う…
半ば脅されて、その無謀なビー玉探しを始めた恭平と、少女・真琴だが…
夏祭りが終わるまでの、短い期間、少し不思議な出会いの物語。
夏祭りの花火が終わるまでに探さないといけない、と真琴は言う。それくらいまでしか、彼女はここにいられないらしい。
田舎の道を歩いて、歩いて、だけど見つからないビー玉。
…それにしても彼女はいったい何者なのだろうか?
直田のばーさんの知り合いだというが、ばーさんは天涯孤独の身であったはず。
このあたりの人間ではなく、今は、誰もいない駄菓子屋に、ばーさんに教えられていた隠されていた鍵を使って入り込み、そしてそこで生活しているようで…?
…ちなみにこっそり駄菓子を頂いているようです。チョコレート菓子がお気に入り。
ただ、無断で拝借とはいえ、きちんとお金は払ってます。泥棒じゃないよ!
そして、店の前で、ふたりで飲むラムネは格別だったり…
子供のころ――ちょうどこの夏祭りの時期、一緒に遊んだ少女。
だけど、けんか別れをしてしまった、苦い記憶も蘇る。
彼女は今はどうしているのだろうか?
恭平は、彼女の現在を知る人間を探すことにする。
きっとこのあたりの子だから、自分と同じ年齢の子供を持つ家庭を探せば、すぐに見つかる…はずだったが、思ったより難航する…
二人のビー玉捜索に、思い出の少女の現在を探す、という目的も加わります。
ああ言えばこう言う、恭平のグチにテンポよくツッコミを入れてくる真琴…、ふたりは、喧嘩しながらも、駅でともにジュースを飲んだり、公園で休憩しながら話したり、少しずつ近づいてゆく。
だけど、駅前で、最近行方不明になったという少女のチラシを受け取った真琴は、顔色を変え…?
一夏の不思議な体験…というゲームでした。
先に書いたように、完全に普通の現代ゲームではなく、少しだけファンタジックです。
織姫と彦星になぞらえた、とある石を持ち、夏祭りの日に祠に入ると不思議なことが起こる…という伝承。
そして、すべてを知っているかのような、過去の記憶の直田のばーちゃんの言動…。
特にばーちゃんの言動には謎が多く、もしや、このばーちゃんは…?と深読みしたくなりました。
このゲームは、とにかくカメラワークが凝っていて、真琴と恭平の初対面シーンも、うつむいた恭平の視点にまず足が目に入り、そこから視点を上に向けて、少女が怒った顔で立っているというのがわかる…、とか、誰かを探すシーンではカメラを左右に動かしてそれを表現しているとか、そういった動の表現がすごく面白かったですね。
背景も、写真を加工したものなのですが、水彩のような表現になっており、ゲームの柔らかな雰囲気に合っていましたし、音楽なども凝っており、ゲームの世界観を統一させることをとても大切にしているのが伝わっていました。
しかし本当に直田のばーちゃんの正体って…?
謎は多く残りましたが、これはすっきりしない謎ではなくて、もしかしてこうなのでは?と推測させるような、ひとを楽しませるための謎ですし、考察しがいがあってとても楽しい。
キンキンに冷えたラムネのような、すっきりとした読後感のノベルゲームでした。
*こちらはティラノゲームフェス2018参加作品です。
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